【硯修會】第1回公演 

平成29年12月10日 

十四世喜多六平太記念能楽堂

ご挨拶

第1回公演、演目は「野宮」です。

言わずと知れた名曲で、ワキ、アイ、笛、それぞれがその本分ともいえる役割を担う典型的な複式夢幻能です。その意味では、見た目の華やかさで誤魔化せない、基本力と地力、そしてこれまで舞台に取り組んできた姿勢が問われるたいへん難しい曲だと思います。

シテ方は第3期研修の担当流儀であった喜多流。塩津哲生先生をはじめ、当時講師としてお越し頂いていた先生方や稽古会・発表会など様々に胸をお借りさせて頂いた方々にご出演をお願いいたしました。

シテは狩野了一師。当時の我々にとりましては、同世代にもかかわらず既に卓越した技量をお持ちの狩野師はまさに目を見張るばかりの方でした。立ち姿の美しさ、柔らかくも芯の強い謡、そして舞台上での存在感。必ずこれからの喜多流を牽引していく方と信じております。

また、大鼓は同じく研修時代にお稽古頂いた柿原崇志先生、小鼓は我々の後輩になられる第7期研修終了生の田邊恭資師にご出演賜ります。

未熟にさえも至らなかった我々の姿を最もよくご存知の皆様に囲まれて能一番を勤めさせて頂きますことは何よりの幸せですし、感謝の気持ちを忘れずに舞台に臨みたいと思います。そして、研修時代にもまして厳しくご指導ご鞭撻を頂き、我々自らが「硯修」していく励みとさせて頂きたいと思っております。

何卒よろしくお願い申し上げます。

フライヤー


ポストカード

野宮」 概要

晩秋の嵯峨野を訪れた旅の僧(ワキ)が野宮の舊跡を拝んでいると、一人の女(前シテ)が現れる。折しも今日・九月七日は、光源氏が野宮にいた六条御息所のもとを訪ねた日。女は往時の様子を語り、榊の枝を神前に手向けると、その時の御息所の心の内を明かす。彼女は、自分こそ御息所の霊だと告げると、姿を消すのだった。驚いた僧。そこへ通りかかった土地の者(アイ)に、僧は御息所の故事を尋ねる。男の語る物語に耳を傾けていた僧は、彼女の菩提を弔おうと決意する。その夜、僧の夢の中に、牛車に乗った一人の貴婦人が現れる。彼女こそ、六条御息所の幽霊(後シテ)であった。御息所は、かつて賀茂祭で負った心の傷を語り、寂しげな野宮の様子を見て感傷に浸りつつ、舞の袖を翻す。しかしやがて、彼女は再び車に乗ると、ひとり去ってゆくのであった。

(金春禅竹・作)

撮影:石田裕

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